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不登校「回復期の逆戻り」を乗りこなす完全ガイド!親の役目とは?

ステママ
塾長、聞いて下さいよ。うちの子、この前やっと3日連続で登校できたのに、今朝は「ムリ」って布団から動かなくて…。
野口塾長
なるほど、それはいわゆる“回復期の逆戻り”ですね。
ステママ
まるで振り出しに戻ってしまった気分です。私の対応が悪かったのかなとか、悪いことばかり考えちゃって…。
野口塾長
そのお気持ちわかります。でも大丈夫、ステママさんのせいではありませんよ。今回は回復期の逆戻り現象について解説しますね。

【今回の真実】

不登校の回復期に起こる逆戻りは、失敗や後退ではありません。
むしろ、お子さんの心身のエネルギーが「学校」「社会」という現実に再び向き合おうとしている証拠。
大きくジャンプするために、少し戻って助走をつけているタイミングです。

①ご安心ください。逆戻りは“回復の証拠”です

「やっと学校に行けるようになったと思ったのに…」
「あんなに明るい表情を見せていたのに、どうして…」

お子さんが再び布団から出られなくなったり、学校の話を避けるようになったりする姿を見ると、保護者の方の心は張り裂けそうになるかと思います。
「私の何がいけなかったんだろう」とご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。

しかし、まず最初にお伝えさせてください。

その逆戻りは、決してあなたやお子さんのせいではありません。
そして、失敗でも後退でもありません。

実は、不登校からの再登校を目指す過程で、実に7割以上の子どもがこうした「逆戻り」を経験すると言われています。
つまり、あなたのお子さんだけが特別なわけでは全くないのです。

回復への道は、まっすぐな上り坂ではありません。
むしろ「三歩進んで、二歩下がる」を繰り返すものです。
そして、この「二歩下がる」という動きこそが、次にまた三歩進むためのエネルギーを溜め込み、足場を固めるための非常に重要な時間なのです。

 

②なぜ?回復期に逆戻りが起こる心理的なメカニズム

では、なぜ回復に向かっているように見えたのに、逆戻りが起きてしまうのでしょうか。
それは、子どもの心と身体のエネルギー状態に深く関係しています。

不登校の状態をシンプルに表すと
心身のエネルギー量 < 日々のストレス量
という形になります。

回復期というのは、このエネルギーが少しずつ溜まり始め、ストレス量と拮抗できるようになった状態です。
しかし、この時点でのエネルギーは、例えるなら「バッテリー切れだったスマホがやっと30~40%まで充電できた」ようなもの。
まだまだ不完全な状態です。

この状態で逆戻りが起こる主なメカニズムは、3つ考えられます。

1.エネルギーの再枯渇(ガス欠状態)

学校という場所は、私たちが思う以上に膨大なエネルギーを消費する場所です。
授業、友人関係、先生とのコミュニケーション、騒音、集団行動のルール…。
これら全てが、回復したての心と身体にとっては大きな負荷となります。

せっかく40%まで充電したスマホで、高画質の動画を外で見始めたらどうなるでしょうか?
またすぐにバッテリーは切れてしまいますよね。

それと同じで、「登校する」という大きなチャレンジによって、溜めかけたエネルギーを使い果たし、再びガス欠を起こしてしまったのがこの状態です。

2.心と身体の「安全確認」

人間には、現状を維持しようとする「本能」が備わっています。
「家にいる」という安全な状態から、「学校に行く」という未知の(あるいは一度危険だと感じた)場所へ踏み出すことには、無意識の恐怖や不安が伴います。

前に進もうとするアクセル(理性)と、現状に留まろうとするブレーキ(本能)が同時に踏まれることで、心が葛藤を起こします。

「このまま進んで本当に大丈夫?」「また傷つかない?」と。
一度立ち止まって安全を確認しているのがこの状態です。

これは、臆病なのではなく、自分を守るための賢明な反応なのです。

3.根本課題との再直面

児童・生徒が不登校に至るには、何かしらの「引き金」や「根本原因」があった場合が多いです(友人関係のトラブル、勉強の遅れ、先生との相性など)。
登校を再開するということは、その課題と再び向き合うことを意味します。

例えば、久しぶりに教室に入った時、友人たちのグループがすでに固まっていて、自分だけがポツンと取り残されたような感覚に陥るかもしれません。
あるいは、授業の内容が全く分からず、強い焦りを感じるかもしれません。

こうした現実に直面した時、心が一時的にポキッと折れてしまい、「やっぱり無理だ」と部屋に引きこもってしまうのです。

 

③うちの子はどっち?「良い逆戻り」と「注意が必要な逆戻り」

逆戻りは自然な現象だとお伝えしましたが、中には少し注意深く見守る必要があるケースも存在します。
ここでは、逆戻りの具体的なサインと、その見極め方について解説します。

逆戻りの具体例と前兆サイン

よくある逆戻りの例
朝、再び起きられなくなる
頭痛や腹痛など、身体の不調を訴えるようになる
昼夜逆転の生活に戻ってしまう
ゲームや動画に没頭する時間が増える
口数が減り、イライラしやすくなる
逆戻りの前兆サイン
ため息が増える、ふとした時の表情が曇りがちになる
学校の話題を避けたり、聞いても上の空だったりする
寝つきが悪くなる、夜中に何度も起きるなど、睡眠リズムが少しずつ乱れ始める

 

見極めのポイント:「良い逆戻り」か「良くない逆戻り」か

大切なのは、逆戻りの状態がお子さんにとって「充電期間」になっているか、「消耗期間」になっているかを見極めることです。

「良い逆戻り(心配ない逆戻り)」の特徴
●学校には行けないが、自分の好きなこと(ゲーム、アニメ、読書など)に対する興味や元気は残っている。
●家族との簡単な会話はできる。
●「学校に行かなきゃいけないのは分かっているけど、身体が動かない」といった、本人の葛藤が見え隠れする。
●食欲はあり、睡眠も(昼夜逆転はあっても)ある程度はとれている。

一方で、

「注意が必要な逆戻り」の特徴
●今まで好きだったものにも全く興味を示さなくなり、一日中ぼーっとしている。
●表情が乏しくなり、家族との会話もほとんどなくなる。
●食欲不振や不眠が何日も続く。
●「消えてしまいたい」「自分なんていない方がいい」といった言葉を口にする。

この状態は、心のエネルギーが完全に枯渇し、うつ状態に近い可能性があります。
これは単なる「休憩」ではなく、SOSのサインです。
この場合は、ご家庭だけで抱え込まず、速やかにスクールカウンセラーや心療内科、児童精神科などの専門機関に相談することをお勧めします。

 

④逆戻りの波を乗り越える「親の寄り添い方」

お子さんに逆戻りのサインが見られた時、保護者の方は不安と焦りでいっぱいになると思います。
しかし、こんな時こそ、親御さんのどっしりとした対応がお子さんの「安全基地」となります。

第一声は「そっか、今日は行きたくないんだね」と受け止める

朝、お子さんが「行けない…」と言った時、まずかけてほしい言葉です。
「どうして?」「昨日まで行けてたじゃない!」という言葉はぐっと飲み込み、まずはその気持ちを丸ごと受け止めてあげてください。
子どもは、自分の気持ちを否定されなかった、というだけで少し安心できます。

原因を絶対に追及しない

「何かあったの?」「誰かに何か言われた?」と矢継ぎ早に質問したくなる気持ちは痛いほど分かります。
しかし、これは逆効果。
お子さん自身も、なぜ行けないのか分からず整理がついていない場合があります。
原因追及は、子どもを追い詰める尋問になってしまいます。
「今は話したくないんだな」と察し、そっとしておいてあげたほうが良い経過をたどることが多いです。

「家は安全な場所だよ」と態度で示す

学校に行けなくても、家にはあなたの居場所がある。
私たちはあなたの味方だ。
このメッセージを、言葉と態度で伝え続けてください。
あえて特別なことをする必要はありません。
いつも通り「おはよう」「ご飯できたよ」と声をかけ、お子さんが好きな食事を用意してあげる。
そんな日常の積み重ねが、何よりの安心感につながります。

ハードルを極限まで下げる

「登校」という高いハードルを一旦取り払いましょう。
そして、「リビングで一緒にテレビを見る」「お昼ご飯を一緒に食べる」など、今のその子ができそうな、ごくごく低いハードルを心の中で設定します。
そして、それができたらOK!と思ってあげてください。

できたことを言葉にして褒める

「顔を洗えたね」「着替えられたんだ」など、どんな些細なことでも構いません。
できたことを具体的に、サラッと伝えてみてください。
これは、「あなたのことを見ているよ」というメッセージになり、お子さんの自己肯定感を少しずつ育んでいきます。

 

⑤保護者自身のメンタルケア術

お子さんのことで手一杯になりがちですが、保護者の方自身の心の健康が何よりも大切です。
お母さん、お父さんの笑顔が、家庭の太陽になります。

「私のせいだ」と自分を責めない

逆戻りは、回復過程で起こる自然な現象です。
決してあなたの育て方や対応が悪かったわけではありません。
「そういう時期なんだ」と割り切り、自分を責めるのは控えましょう。

意識的に「何もしない時間」を作る

お子さんが休んでいる時は、あなたも一緒に休むチャンスです。
家事を最低限にして、お子さんと一緒にゴロゴロしたり、好きなドラマを見たり、読書をしたり…。
意識的に心をオフにする時間を作りましょう。

一人で抱え込まず、誰かに話す

この辛い気持ちを、一人で抱え込まないでください。
夫婦、信頼できる友人、あるいはスクールカウンセラーや私たちのような塾の人間でも構いません。
今の気持ちをただ聞いてもらうだけで、心はふっと軽くなるものです。

ステラオンライン塾では、「自宅で受けられる」というメリットを生かして不登校の生徒さん・不登校経験のある生徒さんの指導も行っています。
遅れがちな勉強面の指導を生徒さんのレベルに合わせて1対1で行うだけでなく、生活リズムのアドバイスや勉強に興味が向くような話・ツールも用意しています。

もしご興味があればお気軽にお問い合わせください。
親身に相談に乗ります。

 

⑥エピソード:逆戻りの先にあった本当の笑顔

T君という中学2年生の男の子がいました。
彼は、友人関係のつまづきから不登校になりましたが、数ヶ月の充電期間を経て、少しずつ元気を取り戻し、相談室への別室登校ができるまでになっていました。

保護者の方も私も、「このままいけば、教室復帰も近いかもしれない」と期待に胸を膨らませていました。

しかし、ある日のことです。
T君は、相談室からの帰り際に、廊下でクラスメイトと鉢合わせになりました。
そのクラスメイトは、悪気なくこう言ったそうです。

「お、Tじゃん。久しぶり。なんで休んでんの?」

この何気ない一言が、T君の心に深く突き刺さりました。
その日を境に、T君は再び部屋に閉じこもり、相談室登校も完全にストップしてしまいました。

お母様はひどく落胆し、「あの日、クラスメイトに会わせなければ…」とご自身を責められました。
私も、かける言葉が見つからないほどでした。

しかし、私たちはそこからT君への接し方を変えました。
焦りを手放し、「登校」という目標を一旦忘れました。
お母様には、「今はT君の心の傷を癒すことが最優先です。家を世界一安全な基地にしてあげてください」とお願いしました。

原因を聞かず、ただ黙ってT君の好きな食事を部屋の前に置き、彼が好きなアニメの話だけを振る。
そんな日々が2週間ほど続きました。

するとある日、T君がリビングに出てきて、ポツリと言ったそうです。

「…あいつは、たぶん、何も考えずに言っただけなんだと思う。でもオレ、『なんで』って聞かれると、何も答えられないんだよな…」

初めて、彼が自分の口から、自分の気持ちを言葉にしてくれました。

私たちは、T君が「なんて答えたらいいか分からない」という不安を抱えていたことに、その時初めて気づいたのです。
それから、T君と一緒に「もしまた同じことを聞かれたら、なんて答えるか」というシミュレーションをしました。
「ちょっと体調崩しててさ」と軽く流す練習を何度もしました。

その1週間後、T君は自らの足で、再び相談室へ向かいました。
以前よりも、少しだけたくましい顔つきになって。

この逆戻りの期間は、T君にとって、不登校の根本原因と向き合い、それを乗り越えるための「作戦会議」の時間だったのです。
もしあの逆戻りがなければ、彼は自分の不安に蓋をしたまま、いつかまた同じ壁にぶつかっていたかもしれません。

 

まとめ

逆戻りは7割の子が経験する自然なプロセス
原因は「エネルギー不足」であり、誰のせいでもない
「良い逆戻り」か「良くない逆戻り」かを見極めることが大切
親は「原因追及せず」「安全基地に徹する」ことが最善のサポート

今、お子さんは、前に進むために、一度しゃがんで力を溜めている最中です。
その力を最大限に引き出してあげるために、保護者の方は、どうか焦らず、ご自身を大切にしながら、お子さんの一番の理解者でいてあげてください。

長いトンネルの出口は、あなたが思っているよりも、ずっと近くにあります。

もし勉強面や生活リズムで相談したいことがあれば、いつでもご連絡下さい!